医療事務の仕事を始めるには、医療事務講座を受講し、資格を取得して就職への足掛かりをつかむのが一般的な方法です。講座を開講しているスクールでは、就職ガイダンスをはじめ、独自ルートによる求人情報提供や人材派遣会社への登録をサポートしています。自分自身で求人情報を収集する場合は、ハローワーク、友人や知人の紹介、就職および転職向けの一般求人雑誌、新聞の求人欄や折り込みチラシが有効です。ハローワークには医療事務の求人情報が比較的多くあり、求人誌や新聞の求人欄には医療関連の求人特集がよく組まれます。また、インターネットで求人情報を出す医療機関も多くなりました。医療事務の代行会社、派遣会社では、随時、医療事務の人材登録を募集しています。登録者へのフォローや条件などをよく確認をしてから登録しましょう。
医療事務スタッフの就職先は、病院や診療所などさまざまあり、就職先によって仕事内容が大きく違ってきます。大学病院などの職場では、一つの仕事を専門で行うことが多いので、各業務のスペシャリストになれる可能性が高いといえます。それに対して小規模な診療所では、一般的な医療事務の仕事だけではなく、秘書的な仕事や雑用などをこなすこともあり、オールマイティーに仕事を覚えられるでしょう。また、職場の規模によって、人間関係にも大きな違いが出てきます。規模が大きくなればなるほど、当然ながら関わる人も多くなります。医療事務スタッフの数が少ない診療所などでは、スタッフ同士のコミュニケーションが規模の大きな職場よりも密になるといえます。仕事面でも人間関係においても、自分に向く職場を探しましょう。
待遇に関しての希望は、人それぞれで異なります。給与の額を重視する人、残業があるかどうかにこだわる人、完全週休二日制できちんと休日を取りたい人、福利厚生の充実度に注目する人などさまざまです。自分の中で、何をもっとも優先するのかの順位をつけたうえで、希望の就職先と条件を照らし合わせてみるとよいでしょう。
求人広告などで希望の就職先が見つかった場合、機会があれば、その医療機関の雰囲気を見に行くとよいでしょう。求人情報だけでは、その職場がどのようなところなのか判断するのは難しいからです。実際に自分の目で、医療事務スタッフの年齢や仕事ぶり、患者への態度などを見ることは、とくに大切でしょう。職場の人間関係で悩むのは、なるべく避けたいものです。また、仕事の忙しさや職場の様子なども見ておきます。もちろん、少し足を踏み入れただけですべてが分かるわけではありませんが、自分がそこで働けるかどうかのイメージはしやすいのではないでしょうか。
就職活動は、求人の情報を集めることから始まります。まず、求人情報を読んで、自分の希望条件と合うかどうかを考慮しましょう。求人情報は、給与などの待遇、応募資格などが書かれており、応募に関するほとんどの情報を得ることができます。給与は月給、時給など税金を含む金額で表示されており、実際に手取りで受け取る金額ではないので、注意が必要です。また、住宅手当やほかの諸手当が含まれた毎月の一定支給額を、固定給というように表示をしている場合もあります。応募資格に関しては、求める人材の資格の有無、年齢、医療事務スタッフとしての経験などが表示されています。医療事務の実務経験がある人を希望している場合も、ここに表示されるので、注意して見ましょう。ただし経験者であっても、求めるレベルの高さは求人者によって異なります。不明な場合は、直接電話などで問い合わせるとよいでしょう。
よく社会保険完備と表示されているのは、雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金の四つのことを指します。また労働保険有りと書かれているケースは、雇用保険、労災保険のみとなり、健康保険と厚生年金は自分で加入することになります。
希望の就職先が決まり、求人票について不明点や確認したいことがあるときは、電話で問い合せをすることが多くなります。電話をかけるときに注意したいのが、場所と時間です。とくに携帯電話からかける場合、静かな場所を選んでかけましょう。また、相手が始業あるいは終業間際の時間帯や、お昼休みにかけるのは迷惑なものです。相手の都合を考えて電話をかけるようにしましょう。そして、言葉遣いにも気をつけ、話の内容は必ず整理をして伝えましょう。顔の見えない相手によい印象を与えるには、最後まで気を抜かずに対応することが大切です。
応募することを決めたら、すぐに履歴書を準備します。履歴書は、自分をPRする大切なツールです。また人事担当者にとっては、応募者の人柄や熱意、経験などを知るための判断材料にもなります。書き方、文字、内容、写真などのポイントを押さえておきましょう。履歴書を書くときは、黒色のボールペンを使用し、大きめの楷書で書きます。たとえ字に自信がなくても、ていねいに心を込めて書きましょう。間違えた場合は修正液は使わず、新しい紙に書き直します。また、面接では履歴書をもとに質問されることので、提出する前にコピーをとっておくことが大切です。
面接は、採用する側にとっては、応募者の人柄を見る大切な機会です。面接でよい印象を与えるためには、最初の5分間が勝負だといわれています。短時間でうまく自分を表現するために、面接のポイントを押さえましょう。面接での主な注意点は、話し方、態度、身だしなみ、話す内容の四つです。医療事務の仕事は、受付業務のように患者を相手にすることが多いので、ていねいな言葉遣いや、聞き取りやすい声のトーン、スピードで話せるかどうかも大事な要素です。もちろん、笑顔で明るい雰囲気を出すことも忘れてはなりません。また、人の目を見て話し、聞くときも真剣さが表れているかどうか、さらに病院という場所にふさわしい、清潔感のある髪型や服装、化粧をしているかどうかも見られます。そして、とくに重要なのが話す内容です。面接に臨むときは、伝えたい内容をあらかじめいくつか考えておきましょう。あまりいろいろなことを話しても、面接官は混乱するだけです。相手にとって、自分がどういう面で役に立つかを基本に考えておきましょう。
面接で自分らしくアピールするためには、まず自分が就職したら何がしたいか、何ができるのかを分析してみましょう。志望の動機も「将来性があるから」というような抽象的なことではなく、自分の性格や能力を踏まえて伝えることが大切です。また、事前に応募先の医療機関について調べることも必要です。相手の経営方針や仕事内容などに対して理解を示すことは、面接官にもよい印象を与えられるでしょう。
取得していない資格を目標にすることで、知識や技能をより高められる医療事務は、資格を取得して仕事を始めても、経験を積みながら勉強を続けていくことで、キャリアアップが図れる職業です。仕事に慣れてから、すでに取得している資格のワンランク上の資格や、まだ取得していない医療事務の資格取得を目標にすれば、専門分野の知識、技能をより高められ、希望の業務に就くことができたり、よりよい条件の職場に移れる可能性がでてきます。また、医療事務関連以外の資格の中には医療事務に役立つと思われるものもあります。例えば、接客能力を高める秘書検定、IT化が進むなかで必要なパソコン関連の資格、外国人の患者応対や院長秘書業務などに役立つ語学関連の資格などです。高齢社会を迎えているので、介護、福祉分野の資格に関する勉強も有効でしょう。
医療事務スタッフに対するニーズは、レセプト業務を中心に、完全に医療界に浸透しています。また、医療事務の資格(検定試験)の価値・認知度が定着してきたこともあり、学生・主婦・社会人から現職の医療事務スタッフまで、実に幅広い層の人たちが資格取得を目指しています。医療事務の資格は、病院内でのキャリアアップを目指す人や、医療事務スタッフの仕事を希望する人にとって、有利な資格だからです。現在、ほとんどの病院ではレセプト業務をコンピュータで処理しています。このオペレータ業務にしても、医療事務の専門知識がなくては正確で迅速な処理はできません。また、コンピュータから出力されたレセプトの最終チェックも、医療事務のベテランスタッフを中心に行われています。医療事務は、医療機関がスムーズな医療活動を行うために必要不可欠な仕事なのです。高齢化社会を迎え、医療にかかる費用(国民医療費)、レセプトの件数も増大しています。それに伴って、病院や診療所では、スタッフ不足や経営の効率化のために、医療事務を医療事務代行会社へ委託したり、派遣スタッフに依頼するアウトソーシング化も進んでいます。レセプト業務を中心とした医療事務スペシャリストに対する重要性は、より高まってきているといえます。