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 請求業務の進め方と基礎知識2

⑤レセプト

医療機関が保険診療を行った際に必ず作成し提出しなければならないのがレセプト、すなわち診療報酬明細書です。かなり以前は、用紙サイズもB5で保険によって用紙の色や線も異なっていましたが、現在は、A4サイズで白色に黒字窯線に統一されています。レセプトの様式は、入院と外来で異なります。@@@93~96頁は、歯科と調剤で使用する様式です。歯科医院や調剤の薬局ではこれらの用紙を使用してレセプトを作成します。

アイコン(外来レセプト用紙の記載ポイント〕

1.受診者の基本情報(氏名・生年月日・性別・保険者番号・記号番号など)を記載します。
2.患者さんの傷病名を記載します。主に治療している病気を上位に記載することが多く、これを主痛として表記します。また、診冨始日や終了日及び転帰(治癒、中止、死亡など)についても記載することになっています。
3.摘要欄と言いますが、診療の内容を細かく記載します。ここに記載される名称は全て診療報酬点数表に掲載されている名称を用いないといけません。
4.点数欄になります。摘要欄に記載した診療に係わる点数を各区分ごとにまとめて記載します。
5.合計点数欄です。受診者がこの医療機関で受けた診療の合計点数が記載します。

アイコン(入院レセプト用紙の記載ポイント)

6.外来レセプト用紙と異なり食事の欄が設けられています。受薯が医療機関から提供された食事について、点数ではなく金額で記載します。このように記載方法については、「明細書の記載要領」というものに定められています。この記載方法を間違えて提出すると各審査機関からレセプトが返戻をされたり、場合によっては後日審査機関に出向き修正をしないといけません。最近は、医事コンピュータを使用して作成する医寮機関がほぼ100%となっているため記載方法を間違えるといったことは少なくなっていますが、窓口業務の患者登録でも述べたように、入力を間違えてしまうと当然のことながら間違えたデータが反映されてしまいます。このようなことは医療事務職員としては最低限クリアしないといけない事柄と言えるでしょう。

医科外来レセプト用紙

入院レセプト用紙

⑥領収書

以前は、医療機関によって様々な領収書を交付されていましたが、現在は、記載する内容も定められました。「保険医療機関等は、医療費の内容の分かる領収書(診療報酬点数表の各部単位で金額の内訳の分かるもの)を無償で提供しなければならない」や「患者から求めのあったときは、保険医療機関等は患者にさらに詳細な医療費の内容が分かる明細書の発行に努めるよう促すこととする」というふうに規定されています。診療報酬点数表の各部単位とは、レセプトの算定区分を指しています。区分の詳細は前出のレセプト用紙を参照。医療事務に精通していると、この領収書を見れば自分自身が受けた治療がどのような金額に反映されているかが分かり、間違いなども発見することができるでしょう。そういった意味では、医療事務、特に診療報酬点数についての知識は、たとえ、その仕事に就かなかったとしても日常生活の中で役立つ知識と言えます。

⑦未収金

昨今の医業経営で、患者さんからお支払いいただく一部負担金などの未収が大きな問題となっています。ほぼ100%の医療機関に何らかの未収があると言っても過言ではありません。その総額は、850億円にものぼる勢いです(四病院団体協議会の調査より)。
未収金の増大は医療機関経営にとって多大な影響を及ぼします。このようなことから医療事務職員は常に「未収を発生させない対応」を心がける必要があります。受付での対応方法で未収金が防げることも少なくありません。特に多く未収金が発生するのは、夜間などの時間外診療時と考えられます。例えば次のような場合、どのような対応をする必要があるでしょうか?

アイコン(未収金発生事例1)

深夜2時に体調不艮を訴え独自で来院。診察を行い薬を授与しました。会計の段階で保険証を持参していない旨申し出があり、夜間に対応した事務職員は、明日持参してもらうように伝え帰っていただくことにしました。しかし、翌日その患者さんは一向に来院されません。結局この患者さんはこの日以降来院されず、未収金となってしまいました。このケースの場合、いくつか対応方法に誤りが見受けられるようです。少し考えてみましょう。
(問題点)
●受付時に保険証の確認をしていない可能性がある。
●もし受付時に保険証を持参していないことが判明していた場合、今回の診療は自費になることを伝えて患者さんの了承を得ること。
●会計時に全額の支払いができない場合、後日保険証を持参していただいた際に清算することを伝えて預かり金として妥当な金額を徴収する。最低限上記のような対応はしておかないと未収金となる可能性が高くなります。さらに、できればしておきたいこととして、
(対応法1)診察申込書に記載されている内容を確認しておく
免許証などを確認し、コピーを取るか自宅に連絡し確認することも有効です。これは、もし未収になりそうな場合に、請求を行うために必要です。意外にも、診察申込書に患者が虚偽の内容を意図的に記載する悪質なケースもあります。このような確認をしておかないと、請求する方法が完全に途絶えてしまい、診療費の全額を医療機関がかぶってしまうことになりかねません。
(対応法2)預かり金もお支払いいただけない場合は家族や同僚に連絡をとり持参してもらう。
少し、厳しい対応のように思えるかもしれませんが、ここまで徹底した対応をしないと未収金を防ぐことは難しいと思われます。
では、次のようなケースはどうでしょうか?

アイコン(未収金発生事例2)

深夜1時に交通事故のため救急車で来院。診察、投薬、CTをしてもらいました。会計では、急なことで持ち合わせがないとの申し出がありました。事務担当者は次回来院時にお支払いいただくことを説明し、患者さんに帰っていただきました。先ほどと似たようなケースですが、事務職員の対応に間違いはあるでしょうか?考えてみましょう。
(問題点)

医療事務 交通事故
できれば、自費診療分の要用を預かることができればベストな対応と言えますが、今回のケースでは特に問題はありません。理由は次の通りです。
●交通事故のため救急車で来院している。
交通事故の場合は、多くのケースで自賠責保険を使います。したがって、保険会社から後日徴収することが可能となります。また、救急車で来院していることから警察には必ず届出が行われます。したがって住所などの確認が行える可能性が高いと言えます。次に交通事故という点です。交通事故の場合、警察に事故届けを提出し、事故の証明をしてもらいます。この証明を元に保険会社に連絡し自賠責保険を活用しますが、必ず診断書を提出しなければなりません。今回のようなケースでは診断書を発行せずに帰っていただき、精算をしていただいてから診断書をお渡しするようにすれば、患者さんは必ず最低1回は来院をしなければいけません。このように、来院している経緯や状況によって対応方法は異なります。昨今は、未収金が大きな問題になっていることから、以前は、警備当直として診療費の専門ではない方が当直しているケースが多く見られました。しかし、最近では、夜間についても診療報酬や保険制度に精通している医療事務職員を配置する医療機関が増えています。医療機関を取り巻く環境の変化から医療事務職員の重要性がますます高まっている一つの事例と言、妄す。未収金を防ぐために医療機関では様々な対策を講じています。

医療機関の役割
医師法では第19条で「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない」と定められています。このような法律から貧困などを理由に診療費が払えないケースでも診療を拒むことはできないことになっています。したがって、完全に未収金をなくすことは不可能と言えます。しかしながら、正しい知識を身に付け適切な対応をすることは、未収金を最小限にとどめ医療機関の運営を正常に行ううえで重要なことと言えます。