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医療事務 医療事務の仕事とは?

医療事務 カルテ

私たちが病院に行くと、受付窓口で保険証(被保険者証)が確認され、カルテ(診療録)が作成されます。医師による診療後、~医師の記入したカルテに基づき会計が行われ、患者は保険種類ごとの負担率に対応した診療費を支払います。病院や診療所などの医療機関では、医師による診療行為が行われるだけでなく、窓口業務や会計業務のほか、それに伴ったさまざまな事務作業が発生します。このような医療機関での事務的業務を総称したものが『医療事務』です。本来、医療活動に必要なすべての事務は、医師が自分で行っていました。しかし、病院の組織化、医療保険制度の複雑化、事務業務の細分化・専門化などに伴い、医師に代わって医療事務のスペシャリストが行うようになったのです。現在、ほとんどの医療機関では「医事課」という部門が医療事務の業務にあたっています。

医療事務の主要な仕事は、大きく次の5つに分けることができます。

◆医療事務の主要な仕事
①受付窓口業務……受付窓口のスタッフとして、外来患者の受付や、カルテの作成・搬送などを行う
②会計業務……診療費の計算を行い、患者の一部負担額を徴収する
③入退院に伴う業務……入院設備のある病院で、入退院患者の事務処理などを行う
④レセプト業務(診療報酬請求事務)……医療機関が診療報酬を請求するために、診療行為を料金化し、
レセプト(診療報酬明細書)を作成する
⑤その他の業務……オペレータ業務、各種統計資料の作成、医療器械・器具の管理など
これらの仕事の中で、もっとも代表的なのが「レセプト業務」で、病院の収入に関わる重要な仕事です。

医療事務の人気が高い7つの理由

アイコン 未経験でも資格取得後すぐに働ける

以前は、医療事務スタッフは無資格でも働けることが魅力でした。しかし最近は、医療事務の知識があることを証明する資格を取得しないと、就職は難しいのが現状です。そのため、医療事務の資格を取得してから就職する人が多くなりました。資格試験は未経験でも短期講座などで勉強して受験でき、合格すれば就職に有利なことが人気の理由です。

アイコン 自分に合った勤務形態が選べる

たとえば、安定した環境、待遇でキャリアアップしたい人は正社員、自分の希望に合った職場を紹介してもらいたい人は派遣社員、主婦業と両立して働きたい人はパートタイムなど、医療事務の仕事はその専門性を活かして、さまざまな勤務形態で働けるのが魅力です。派遣社員やパートタイムであれば、仕事の内容も選択、限定することができます。

アイコン 年齢、性別は関係なし

医療事務は、女性が多い職種とはいえ、男性職員も同じように働いています。しかし、やはり女性が年齢を気にせずに自由に働けるのが、大きな魅力です。実務経験を積めば、年齢が高くなっても、患者へのサービス業務、レセプト業務、秘書業務など、どの業務においても、専門知識や能力を活かして働けます。

アイコン 人の役に立ち、社会的意義がある

医療機関に勤め、病気やけがなどを負っている患者の役に立てることが、医療事務のやりがいにつながるといえるでしょう。「少しでも、病気の不安を抱えている患者の支えになり、励ますことができればうれしい」、「感謝されることが何よりも励みになる」といった、現役医療事務スタッフの声が多くあります。働くなら、社会に貢献できる仕事がよいという人に最適です。

アイコン 全国の病院で勤務できる

医療事務は、厚生労働省が定めた医療保険に関する仕事です。そのため、資格や経験は、全国どこの医療機関でも通じ、就職につながります。たとえば、結婚している女性であれば、ご主人が転勤の多い仕事でも気にすることはありません。

アイコン 生活環境が変わっても働ける

結婚、出産などで仕事からしばらく離れていても、医療事務の資格を取れば、復職しやすいのが大きな特長です。通信講座なら、家事や育児の合間に自宅で資格取得のための勉強をすることができ、働く際には勤務形態を選ぶことができます。また、すでに医療事務スタッフとして働いている人は、社員であれば、育児休暇などの子育て支援制度が整っているので安心です。派遣社員やパートタイムであれば、自分で休業期間と復帰の時期を考えることができます。医療機関で働いていると、育児と仕事を両立させている医療事務スタッフが多いので、先輩から学ぶことができるでしょう。

アイコン 医療を知るのに

医療機関で働いていると、一般ではなかなかわかりにくい医療の世界が見えてきます。たとえば、自分や家族が病気になった時に、病院選びや上手な利用方法、診療報酬の額などがわかるので、落ち着いて対処することができます。また基礎的な医学も学ぶので、自分自身の病気の予防にも役立ちます。

医療事務スタッフが働ける場所

病院と診療所の違いを知っておこう

医療機問は、医療保険が適用される保険医療機関と、医療保険を使用せず、患者が全額自己負担をする自由診療機関にわかれます。さらに、保険医療機関の中でも患者が入院できるベッドが20床以上ある施設が病院、入院施設がない、または入院のためのベッドが19床以下の施設は、診療所と定義づけられています。

アイコン 病院といってもさまざまな種類がある

病院は、入院施設(病床)の種類によって分類されています。病床には一般病床、療養病床、精神病床、感染症病床、結核病床があります。一般病床や、療養病床を持つ医療施設は一般病院、精神病床のみの場合は、精神病院、感染症病床のみの場合は感染症病院、結核病床のみの場合は結核療養所となります。

アイコン 診療所は町のお医者さん

診療科目や医療設備の整った病院に比べ、規模の小さい診療所は、医院、クリニックなどという名称で、町中に多くあります。風邪や頭痛など軽い症状の際に、地域の住民が気軽に利用できる医療施設です。内科や外科だけでなく、皮膚科や眼科、耳鼻科も診療所のひとつ。医療事務の仕事は、医科と歯科にわかれていて、これらはすべて医科になります。

アイコン 歯科医院も診療所に含まれる

歯科医院も診療所の中に含まれ、医療事務スタッフの職場となります。歯科医院で働く医療事務スタッフは、歯科助手とも呼ばれ、窓口対応や患者の予約の管理、歯科医や歯科衛生士の補助などをしながら診療報酬請求業務も行います。

アイコン ほかにも調剤薬局など活躍する場は多数

医療施設のほかに、医療事務の職場として今注目されているのが調剤薬局です。医薬分業化にともない、医療事務スタッフの数は足りない状態で、需要が高まっています。調剤薬局では、診療報酬ではなく調剤報酬の請求業務を行います。また、超高齢社会の到来によって、看護ステーションなどでも、医療事務スタッフが求められています。ほかにも、地域に密着した健康増進センター、健康診断などを行う企業内の診療施設、宿泊者のためにホテルに併設されたクリニック、自宅療養している患者へのサービスを行う訪問看護ステーション、医療関連の企業など、働ける場所は数多くあります。

知っておきたい医療保障制度

アイコン 医療保障制度に基づいた医療事務

医療保障制度とは、医療費を個人が全額支払うのは負担が重すぎるため、国民が保険料や税金という形で一定の額を拠出して医療負担に備える制度です。国民皆保険といわれ、国民は誰もが医療保険に入る権利と義務があります。この制度により、療養給付(医療サービスの提供)と現金給付(傷病手当金や出産手当金、埋葬費など)を受けることができます。医療保障制度を細かく見てみると、医療保険制度と老人保険制度、労災保険制度、公費負担医療制度などがあります。医療事務の仕事の中でもとくに重要な診療報酬の請求は、これに基づいて行われています。

アイコン 医療保険制度の種類

医療保険制度は職域保険(被用者保険)と地域保険(国民健康保険)にわかれています。会社員が入っているは、職域保険(被用者保険)にあたります。被用者保険には、民間企業および、5人以上の従業員のいる事業所で働いている人を対象とした健康保険と船員保険、国家公務員や地方公務員などとその家族を対象とした共済組合があります。国民健康保険は、農業者や自営業者、自由業者、無職の人など被用者保険に加入しない人を対象としたものです。地域住民が入る市町村国保と、同種の自営業者などによって組織される国民健康保険組合があります。

アイコン 医療保険のしくみ

医療費の一部は、被保険者が直接利用施設に支払いますが、残りの費用は医療機関から保険者に請求します。保険者は医療機関が行った医療サービスが適切だったかを審査。支払いは審査支払機関に依頼しているため、医療機関は審査支払機関にレセプトを送ります。

医療保険から支払われる範囲は?

医療保険による給付の範囲は診療費や薬剤費、医療材料、特定療養費、入院時の食事療養費などと決められています。健康診断や美容整形、分娩の費用、往診や訪問治療、訪問看護などでかかる交通費などは給付対象外になっています。また、交通事故など第三者による傷病は、第三者(加害者)が支払うべきで、原則として給付対象外ですが、被害者である被保険者から保険で取り扱って欲しいなどの申し出があった場合には、保険診療として扱います。このように、医療保険から支払われる範囲は細かく決められています。

今後、医療事務に期待されること

アイコン 医療費の増大で、仕事は増える一方

高齢者が増えれば、患者数も増えます。また老人保健制度の対象者が増えるため、患者に直接請求する診療費よりもはるかに多い費用をきちんと保険者に請求する必要があります。これは、病院や診療所などの医療施設の収益にかかわること。診療報酬請求業務を行う医療事務スタッフは、医療機関の要として活躍が期待されます。

アイコン アウトソーシングでより働きやすく

病院や診療所などの医療機関では、経営の合理化を図るために、医療事務の仕事の中でもとくにレセプト業務をアウトソーシング(外部委託)することが増化しています。そのため、医療事務代行業や派遣会社などで医療事務業務ができる人材を確保しようという動きが活発になっています。業務自体は、その医療機関に出向いて行うことになりますが、勤務形態などが選べ、より働き方が多様化しつつあります。また派遣会社では、レセプト業務を指導できる人材を医療機関へ派遣することもあります。医療事務のスペシャリストになれば、活躍の場がさらに広がるといえるでしょう。

アイコン 専門性を持った医療事務が望まれる

多数ある医療事務の仕事をさらに細分化して専門性を高め、合理化して患者へのサービスに還元しようという動きがあります。健康保険組合や地方自治体などの保険者側でも、診療報酬の過誤請求などを防ぐためにレセプトを点検する義務があるため、レセプト点検業務のみを専門に担当する人材のニーズが高まっています。

アイコン 医療保険制度改正による複雑化に対応

混合診療の問題などを含めた医療保険制度の抜本的な見直しがされようとしています。混合診療とは、公的な医癌保険が利用できる通常の保険医療と、保険が利かない自由診療を併せて行う治療のこと。現在の法制度では原則禁止になっていて、もしこのような治療を行うと、公的医療保険が適用される分も含めて、全額患者の本人負担になります。今後の改正に伴い、医療事務の仕事がより複雑化するため、迅速に対応することが求められます。

アイコン 統計業務などを通じて経営にも関わる

患者数の動向や、病床利用状況などの統計を作成したり、分析したりすることを統計業務といいます。大学病院などでは、医事課に集まる膨大な入院収入や外来収入などのデータを整理して分析し、病院の経営状態を把握しています。そして分析結果を患者へのサービス向上や、経営の改善などに役立てる動きがあります。最近では、これらの統計業務を行う医療事務スタッフが求められる傾向が高まっています。医療事務の知識とともに、統計学やデータの分析力も求められるレベルの高い業務だといえます。