外来患者へのサービス業務は、病院の顔ともいえる大切な業務です。主な仕事としては、病院に通院する患者の受付、会計などを行います。受付は、患者が最初に来て、小規模の病院であれば、診察後に会計をして帰って行く場所。にこやかな笑顔はもちろん、限られた時間内での患者への案内や事務処理は、正確さとスピーディさが求められます。
受付では病院に初めて来た患者に初診受付で診療申込書を記入してもらいます。医療事務スタッフはこの申込書を元に、新しい患者としての患者情報の入力を行い、保険証の確認、その病院の診察券の発行、医師への基本書類の作成をします。患者へは、病院内部などの病院の各種案内を行い、診察科へ案内します。案内は同行する場合や、診察科への行き方を説明するだけの場合など、その病院によって患者への対応は違いがあります。
窓口業務を担当する医療事務スタッフは、病院内の中心的存在です。受付スタッフの対応により、患者の病院に対する印象も決まってきます。態度一つにも、気を配る心がけが必要でしょう。
外来患者へのサービス業務の中でも、保険証の確認はとくに重要な仕事で、市町村や保険組合の指導により、義務づけられています。日本では誰もが医療保険に入る権利と義務があり、保険指定医である病院なら、患者は保険証を提出し、医療費の一部を負担するだけで必要な治療を受けることができます。保険証は患者の職業によってさまざな種類があり、それによって患者の医療費の負担額が異なるので、受付ではきちんと確認することが必要です。患者から保険証を受け取ったら、基本情報である保険の種類、氏名、性別、生年月日、保険番号、住所をコンピュータ入力します。
多くの病院では患者の情報を入力することで、診察券を自動的に発行できるシステムを取り入れています。診察券はプラスチック製のカードがほとんどで、磁気ストライプがついています。この磁気ストライプには患者の情報が記録されており、診察状況や薬剤の処方などがすべてわかるようになっています。
カルテは、患者の個人情報を含む診療経過がすべて記されるため、病院にとってきわめて重要な書類です。医事課や病院では、病院経営に関わる書類ともなり、レセプト作成の際にも必要です。カルテの内容の中で、患者の今までの診療歴、病状の経過、薬剤の処方、病状の経過に関するまでは、医師が記入することになっています。医療事務では、患者の名前、住所、生年月日、性別、保険証の記録、そのほかの基本情報を記入します。カルテの発行方法は、手書き、コンピュータでの入力、診療申込書・保険証のコピーなどを添付する方法など、病院によって処理のしかたが違ってきます。
病棟や外来で医療行為が行われた場合、その医療行為を点数化して料金化します。これを、レセプト業務といい、医療事務の仕事の一つでもあります。料金化するためには、医師や看護師などの医療行為に関わっている人たちの情報が元になります。患者に対して行った処置や検査、手術行為などの情報は、外来支持票に記入されます。外来支持票は、今ではコンピュータ処理して発行されるのがほとんどです。この発行作業は、受付で処理されます。
カルテとともに搬送するもう一つの書類が、会計カードです。これは、外来指示表がレセプト作成のためなのに対し、会計窓口の効率化のために作られるカルテの控えのようなもの。会計カードも、外来指示書と同じように医師や看護師によって診療内容が記入されます。それを患者が会計窓口に持参して、診療費の負担額を計算することになります。
患者情報の入力作業が終わり、診察券、カルテ、外来指示票、会計カードが発行されると、患者を各受診科へ案内します。その際に、患者自らカルテを持って診察を受けに行く場合と、医療事務スタッフがカルテを運ぶ場合があります。
会計業務とは、外来患者の診療費用を計算する業務のこと。医師によって診療内容などが記入された会計カードを元に、患者の負担金額を計算します。計算は診療報酬点数表という、ほぼ2年おきに改定される資料を見ながら行います。診療報酬点数表は、社会保険や国民健康保険などの種類に関係なく、診療報酬計算の元になるものです。点数表には、医科点数表、歯科点数表、調剤点数表の3種類があり、それぞれの医療機関で使われます。また、各点数表は基本診療科と特掲診療科の二つの章に分けられています。基本診療科は、初診料、再診料、入院料といった、診療の基礎的なもの。一方、特掲診療科は、検査、投薬、注射、手術などの料金のことです。各診療行為ごとに点数が決められており、会計では基本診療科と特掲診療科の二つを合わせて計算します。医療事務スタッフは、診療報酬点数表に基づいて、診療行為の点数を割り出し、カルテ内の決められた箇所に転記。それをさらに足していきます。患者が入っている医療保険によって、支払う診療費の負担割合が違うため、それに応じて料金化をします。
診療が終了した患者が、会計窓口に会計カードを提出したら、提出した順番に計算をして患者負担金額を回収します。また、このときに預かっていた診察券を返却します。規模の大きな病院では、患者の人数が多い場合、計算処理が終了した順番で何人かまとめて精算することもあります。また、患者に薬が処方され、投与される場合は、会計時に処方せんも一緒に手渡す場合が多いようです。その際は、患者の名前と処方せんが合っているかを、きちんと確認することが大切です。さらに、近くの調剤薬局の案内や、処方せんの有効期限を伝えることも必要です。
カルテの管理方法は、それぞれの病院により違います。大規模な病院ではカルテ室を備え、中小規模の病院や診療所では、受付の後方の棚にカルテが保管されていることが多いようです。カルテは短時間で出し入れするため、日々の整理が必要となります。院内での患者番号順、アイウエオ順、診療科ごとなど、管理のしかたもさまざまです。また、カルテは現在治療中で通院している患者と、通院中ではない患者とに分けて管理します。カルテの保存期間は、治療内容やそのほかの内容に応じて定められています。そのため、必要に応じてカルテを置き換えることも必要です。また、医師、看護師、医療事務スタッフへのカルテの貸出しがたびたびあります。貸出しの主な理由は診断書の作成、レセプトの照会などです。このため貸出し先を明確にし、紛失を防ぐようにします。カルテ貸し出し簿の作成も、医療事務の重要な仕事の一つとなります。
再来受付は、患者が診察券を投入し、受診する診療科目を選択した後、診察券と受診票が出てくるしくみになっている病院もあります。医療事務側のコンピュータでは、外来基本伝票が発行され、それを見てカルテ出しを行います。
再来受付では、その月の最初の受診日に保険証の確認を行います。日本ではすべての人が保険制度に加入しており、多くの種類の保険証があります。受付では保険証の種類、内容を正確に碓認する必要があります。
病院の収入は、外来収入と入院収入に分けられます。病床のある病院の収入の6割程度は、入院収入からまかなわれているのが実情で、入院患者へのサービス業務は、病院にとって重要なものといえます。患者の入院は、通院で治療や診察が困難な場合、病状の経過を観察しなければならない場合など、療養に必要な場合のみ認められています。その病院で治療を続けている患者が入院をすることが多く、ほかには診療所からの依頼や、救急で運び込まれた患者の場合もあります。
入院が必要かどうかは、患者の担当医師が判断し、病院の院長が決定することが原則です。入院が決まったら、緊急の場合以外は入院指示書が担当医師により作成され、患者に渡されます。入院指示票と呼ばれる場合もあり、その様式は病院によってさまざまです。入院指示書には、患者の氏名や生年月日などの基本情報、入院年月日、主な病状、入院時の経過、病室などの条件、食事の指示(食事制限がある場合)、手術予定日などが記載されます。患者は、医師から入院の目的、期間などの説明を受けた後、入院指示書を入院受付に持参して提出。これが入院手続きの始まりです。
医療事務スタッフは、患者が持ってきた入院指示書を受け取ったら、入院患者用カードや入院用カルテを発行します。そして、入院日までに外来用カルテ、心電図記録、レントゲンフィルムなどの関係書類をそろえておきます。また、入院日が決まっていたら、入院前に入院案内書を作成します。入院案内書には、病棟や設備などの病院案内や、入院のために準備すべき物など必要事項が記載されます。これを入院前に患者に渡す、あるいは送ることも仕事の一つです。入院日がきた場合、または緊急入院の場合には、すぐにカルテなどを病棟に搬送します。
入院診療費は、長期になればなるほど高額になるため、医療事務スタッフは、入院前に大体の金額を患者に説明する必要があります。とくに長期入院の場合は患者負担が重くなり、支払いが困難なことも考えられます。そんなときは、高額医療費の貸付制度や、公費負担制度の案内もします。患者が納得できる説明をするために、入院診療費に関する専門知識も欠かせません。また、入院診療費は、月2~3回の定期請求で処理している病院がほとんどです。そのほとんどがコンピュータ処理されるため、設定をすれば、定期的に計算でき、請求書を発行できるようになっています。
患者が退院する場合は、担当の医師によって書かれた退院指示書が患者に手渡されます。患者が会計窓口に提出したときから、退院の手続きが始まります。医療事務スタッフが、患者から退院指示書を受け取ったら、入院日から退院日までの診療費を計算し、患者の負担額を回収します。会計が終わったら、会計窓口で退院許可書を作成し、患者へ手渡します。患者は退院許可書を病棟へ提出したら、退院することができます。また、医療事務スタッフは、患者から退院許可書を受け取ったらすぐに、退院の報告を各部署に連絡します。連絡先は、病床を管理している部署、食事を配給している配膳課、寝具を手配している部署など、病棟や入院診療に関わっているすべての部署になります。
前にも述べたとおり、病床のある病院の収入のうち、6割程度は入院収入が大半を占めています。そのため、病床の管理をすることは、病院の経営をよくするうえで、重要な仕事といえます。病床管理は、空いている病床の数や、退院予定患者数を把握するのが主な仕事です。ほとんどの病院では、各病棟の看護師長が管理していることが多いようです。ただ最近では、病床管理の効率をよくするために、医療事務スタッフも業務に関わっている病院が増加しています。つねに病床の回転率、利用率、平均入院日数などを把握検討し、病院経営に役立てています。
病床管理を医事課で行っている病院の場合、医療事務だけで空き病床数などを把握するのは難しいもの。患者の病状を把握している、看護部長や医師と連携をとりながら確認をします。さらに患者の病状の情報から、退院予定情報などこれから発生する状況の判断が必要となります。それには、普段から院内での情報収集と、各診療ごとの病床数などを知っておくことが大切です。